見えないけれど確かに存在する、見えるけれど存在しない、今は見えないけれどいつか見える....。“存在” という「あたりまえ」の意識を、 “不可視” というテーマで視点を変えられたらおもしろい。私たちがそう考え始めた2019年、Covid-19や急激な気候危機などの「目に見えない存在」によって、こんなにもいままでの「あたりまえ」が揺るがされる未来は、誰も想像していませんでした。
そして今、私たちは “不可視” というテーマに向き合うことにますます意義を感じています。なぜなら「見えない」という言葉は「そこに何かあるんじゃないか?」という期待の裏返しであり、言いかえれば “不可視” とは「存在する」ことや 「見える瞬間」 への期待である、とも言えるからです。いままで見えなかったものにふと気づいたり、あなた自身が偶然それを発見したとき、もともと「見えていた」単なる視覚情報を越える感覚が、身体の中に湧き上がります。“不可視”という問いに向き合ったときに見えてくるもの、それはあなたのイマジネーションです。
今回ご覧いただく2名のアーティストによる不可視をテーマとした作品は、確かにここに存在しますが、その作品からあなたが想像し発見するものは、きっと他の誰とも違う風景であり世界観です。それは何が起こるかわからない未来において、明日へと繋がる希望になると私たちは信じています。ぜひ可視と不可視を行ったり来たりしながら、多様な“存在”をゆっくりとイメージしてください。
RESONANCE MATERIALS Project 2021 「不可視 〜存在の試行〜」
DESIGNART TOKYO 2021 Website
https://designart.jp/
宙に浮かせ、触らず、熱に任せて作ったガラスには、水に似た潤いや煌めきがある。そうしたガラスの塊で作られた車輪。これと一緒に、身近な道を歩く。ゴロゴロと転がるにつれて、残念なことに、ガラスは少しずつ傷ついていく。人の往来が制限される渦中、このガラスの塊を、遠く離れた地に送り、やはり身近な道を共に歩いてもらった。そうしてゴロゴロは人の作った大地を記録する。ガラスという素材は案外丈夫で、いろいろなものに耐性がある。自分が存在しない遠い未来にも、このガラスの塊は残るだろう。今、自分が見ているガラスの潤いや煌めきは薄れていくかも知れない。それでも自分や他者が見ることのできない多くの情報を、ゴロゴロは記録し続ける。
使用素材:ガラス
人間と植物との先史から続く営みに、国境を超え文化を交えて共通するものの存在を発見することができます。
地域固有の文化や自然観に魅了される一方で、共通するものの存在は人間としての意識の共有やコミュニケーションの手がかりになると考えます。
ものの成り立ちや起源を人間の植物への振る舞いの中に探り、見慣れた製品の分解、見立てや置換によって、新たな解釈をもたらす空間を制作します。
見たいものしか見えない人間の見方を自覚しながら、見ることのできない世界を想像する力が私たちに自生することを誇り、無数の世界の存在を制作を通して呼びかけます。
使用素材:植物、木材、工業製品、布、糸
RESONANCE MATERIALS Projectとは、東京藝術大学GEIDAI FACTORY LABと感動創造研究所が2018年に立ち上げた共同プロジェクトです。素材と身体感覚を見つめるGEIDAI FACTORY LABと、社会と心の動きを見つめる感動創造研究所による実験的なコラボレーションは、「ミラノデザインウィークの一部になりたい」との双方の熱量をきっかけに進み始めました。以来、アートを媒介に素材と鑑賞者の内面を響かせる企みを続けています。初出展したMilan Design Week 2018は素材の身体的実感に、つづくMilan Design Week2019では実感の先にある知覚に焦点を当ててきました。そして今回のDESIGNART TOKYO 2021では知覚の拡張に焦点を当てます。こうした企みと言によって触覚性や実体感の価値の再認知を促し、これからのコミュニケーションのあり方を問いかけるものです。
東京藝術大学 GEIDAI FACTRY LABは、東京藝術大学取手キャンパスの工房群の設備やスキルを活かして産学連携プロジェクトを企画・実行しています。アートがもつ多様で柔軟な視点から、実践によって「つくること」の価値を研究し、社会と共有していくことを目標としています。
[ Project Member ] 三枝 一将、寺田 健太朗
感動はひとそれぞれ、きわめて個人的な想い。多様性が叫ばれる現代、すくい上げた固有の想いを可視化し、社会的な意味や効果へと最適化する・・・私たちは、「感動が持つ価値」が社会的な財として共有された、感動体験に富んだ心豊かな社会形成へ寄与します。
[ Project Member ] 松本 望、中井 利明、福田 龍典