多神教の国である日本では、あらゆるモノに精霊が宿り、それは八百万の神と呼ばれます。アートとは本来、モノに精霊を宿す術であります。もはや我々のコントロールを超えたテクノロジーとIOT化によって、実感のないままに、生活が急速に変化しつつある現在、私達は身体感覚の拠り所をどこに置けば良いのでしょう。 本プロジェクトは、ヴァーチャルなメディウムが発表され続ける社会に対して、もっと現実の素材へ目を向けることを提案します。我々は、原初的に素材が持っている造形されることへの抵抗を、アートを通し、触覚性の復権、実体感の再認識に挑戦します。
参加アーティストは、使う素材〈ガラス、楠や檜などの木材、七宝、石材、マニュキュア、鋼、真鍮、ステンレス〉の内なる声を聞くことで、制作行為をも作品の一部とし、素材解釈へのヒント、造形へのヒントという価値を見出そうとしています。 我々は、このプロジェクトに共感するすべての方々と、エンゲージメントし、共同で何かを行うための土台作りをはじめます。ミラノサローネデザインウィーク2018を出発点とするこのプロジェクトは、まずは皆様と日本的な感性で、素材に宿る何かを感じることを試みます。
素材に触れるという身体感覚下において、単に素材を掛け合わせるということではなく、複合的に扱われた素材が、独自の技術やアーティストの感性と共鳴し、見る人との間に共感する価値を生み出すことでしょう。 このプロジェクトにおいて、同じ時間、同じ空間を共有し、“感じる” コトは、人と人に体験する価値を認知させ、様々な事象とのコミュニケーションのあり方を追求していくことでもあります。
ガラス×金属×光
■1984年千葉県千葉市生まれ
■東京芸術大学大学院美術研究科博士後期課程 美術
■受賞 野村美術賞/サロン・ド・プランタン賞
1200度の蜂蜜のようなガラスの中で金属を溶かしながら、偶然の形を封じ込める。
液体と固体の間を彷徨い、恣意と作為の間で生み出された透明な物体は、どこかの惑星に生まれた原初の生命体のようだ。
光を放つ生命体のようなガラスの塊は、外的な音によって反応し、あなたとコミュニケートすることができる。
木×アルミ×香
■1982年東京都世田谷区生まれ
■東京芸術大学大学院美術研究科木工芸専攻修了
地面と垂直に育った木材を、旋盤で水平方向に削り、それを垂直に二等分する。木に閉じ込められていた時間が匂いとなって空間に立ち込める。
匂いとともに見えてくるのは、形か輪郭か、痕跡となった行為だろうか?
切断された梯子が、反転して脚立となったとき、あなたの身の回りにあるモノの感じ方が少し変わるもしれない。
金属×木×音
■ 1978年東京都日野市生まれ
■東京藝術大学大学院美術研究科鍛金専攻修了
■受賞 サロン・ド・プランタン賞
ゆらゆらと揺らめき、チラチラ光る。
互いにぶつかり、キラキラと音がなる。
視覚的な音、聴覚的な光が空間に響く。
その時、私たちは
見えない光を聞き、聞こえない音を見ることができるだろうか?
*バシェ兄弟とハリー・ベルトイア、バルセロナ大学のマルティ・ルイツに、リスペクトを捧げて。
釉薬×銀線 × 反射
■1984年兵庫県西脇市生まれ
■東京藝術大学大学院美術研究科彫金専攻修了
■受賞「第5回タグボートアワード」 小山登美夫審査員特別賞
眼球は、人間の持つ最も美しい感覚器の一つである。 金属板にガラスを焼き付け重ねていく七宝技法は、金属の反射とガラス釉薬の透明感が重なり、まさに眼球のような、みずみずしさと光を描き出す。
眼は心の窓と言われる。
あなたの眼は何を映し出していますか?あなた自身の眼で視てほしい。
大理石(カッラーラ)×マニキュア ×言葉
■1983年東京都練馬区生まれ
■東京藝術大学大学院美術研究科壁画専攻修了
「今日も、思ってもいないことを言ってしまった。」と彼女はつぶやく。音となって消えてしまう言葉はしかし、心に深く残り続ける。表裏うらはらな彼女の言葉は永い時によって堆積した石に刻まれて、現実世界の重さを得た。
どうぞ、鏡の前に立ち、重いフキダシを手にとって顔の横にかざしてみて下さい。あなたが発したいのは表と裏、どちらの言葉ですか?